学会概要

設立趣旨

看護は、人の生き死に、生き方、生活に関わる活動です。活動を通して、看護する者は看護を受ける者と相互に影響し合うため、倫理性なくしては成り立ち得ません。
しかし、人間はそれぞれ異なる文化的、宗教的背景の中で生き、異なる教育を受け、それぞれの価値観を有しているため、倫理についての普逼的な答えを求めることはきわめて困難です。だからこそ、これまで多くの議論を重ね、倫理を追究する姿勢を持ち続けてきました。そして、今後も地球環境の変化、科学技術や情報技術の進化、諸処の制約の増加などの歴史的流れの中で、現実的・予期的に向き合うべき課題が減ることはありません。
このような背景の中で、本学会は、看護倫理の知を体系的に構築することを目的として設立いたします。
すでに臨床現場では看護倫理が語られ、教育現場では倫理が教えられ、研究現場では研究倫理が整備されてきています。各種学会においては、看護の倫理的な現象に着目した発表も数多くみられています。このように、看護倫理への関心が途絶えることなく継承されてきたことはきわめて重要なことです。しかし、残念ながら、必ずしも体系的な検討が積み重ねられてきたわけではありません。看護倫理の研究方法論など、学問的探求の課題も見えてきました。これまでの議論をもとに、多岐にわたる看護倫理の知を体系化する準備性が整ってきた現在、学会を設立することにより、学問的探求の成果を発表し、討議を深めることが重要と考えています。
看護倫理は看護の質そのものを左右します。そのため、日本の文化に合った看護倫理の知を積み重ねていくことは、看護の質保証を行う上で不可欠です。知が積み重なれば、看護にたずさわる者が看護倫理の言葉を持つことになります。それは、人間をケアする専門職者として、社会に果たすべき役割を明確化することであり、その役割をよりよく遂行することにつながります。これは看護職者の社会的使命だと考えています。
このような本学会の役割と使命をご理解いただき、設立にご助力いただけますようお願い申し上げます。

2008 年2 月13 日
発起人(50 音順)
石井トク、和泉成子、ウィリアムソン彰子、小笹由香、
勝原裕美子、小西恵美子、高田早苗、田村恵子、星和美

学会設立に向けての言葉と経緯について(抜粋)

  1.   Verena Tschudin氏:元Nursing Ethics誌編集長
    日本看護倫理学会の設立とその学会誌の創刊を心からお祝い致します。看護は今、世界的な保健医療の市場化と、著しい人材資源不足に直面しています。この重要なときに、日本看護倫理学会が設立され、またその公式ジャーナルが生まれました。
    医療の変化は、自身の立場や姿勢についての再考を看護職者に迫っています。医療技術が進展するなか、看護職者はまた、個人として、また専門職者としての基本的な価値観の見直しを迫られています。思いやりの心や人としての尊厳などは、苦しみに直面したときの古くからの普遍的な価値です。しかし、それらをどのように解釈するかについて、再考することがますます必要になっているのです。(中略)地域の中でいつも私たちが認識する価値観は世界につながっています。私たちが提供する在宅ケアは、世界でなされることに影響を及ぼします。したがって、私たちの地域の価値観を知ることは、世界の中で和をもって共に生活していくために不可欠です。
    これらを考えると、日本看護倫理学会は、何が重要であり、何が求められ、また、ナースが力を合わせビジョンを持ち寄った時に何が達成されうるのかを世界に発信していくために、地域における看護と医療の価値観を知り、それを育んでいく重要な場であるということができるのです。(Verena Tschudin: 巻頭言「古い価値観と新しい価値観」, 日本看護倫理学会誌, Vol.1:1-2, 2008.より抜粋)
  2.   小幡光子氏:当時三重大学医学部看護学科
    日本看護倫理学会の設立を大変嬉しく思っています。
    第1 回集会では、型通りの運営を超えて、熱気あふれる議論がなされ、参加者それぞれの現場が抱える問題の切実さと学会への期待感が感じられました。
    「看護倫理について、その定義や探究方法、倫理原則や理論と看護倫理の関係、現場の問題の解決等について、本格的な議論を行うことができる学会」(高田大会長)に育つよう、会員として今後の発展を共に支えていきたいと思っています。(以下、省略)(小幡光子:日本看護倫理学会の設立に寄せて, 日本看護倫理学会誌, Vol.1:42-44, 2008.より抜粋)
  3.   小西恵美子氏:当学会監事(元副理事長)
    看護倫理の学会が日本に正式に誕生したのは、2008年 6月15日、日本看護倫理学会設立集会の会場( 神戸)においてであった。当時、国際看護倫理センター( International Center for Nursing Ethics) のセンター長であった Anne J Davis 博士( カリフォルニア大学サンフランシスコ校・長野県看護大学名誉教授) は、看護倫理を標榜する学会は世界を見渡してもほとんどないと、この学会の発足を心から喜んで下さった。2007年秋、ある大きな学会の看護倫理検討委員会の最後の会議が終わり、それぞれが帰り仕度についたとき、誰かが「看護倫理の学会をつくろう」と声を上げた。「マジだよね」と再び席に戻り、その場で全員が本学会設立の発起人になった。その時の熱い思いと絆をバネに、準備の集まりを何度も重ね、「会員をどうやってふやすか」「お金のことは」と思いめぐらす発起人たちを、「Start small and grow( 小さく始めなさい、そして成長しなさい)」とアメリカから励まして下さったのも Anne 先生である。
    「専門職組織が設立されて最初の数年は基礎固めの時であり、会員を増やして財政的・人的資源の基盤を作ること、組織の構成、権限、コミュニケーション等の組織の諸側面を定めること等の組織運営に不可欠な事項に取り組む」(Fowler M, 2006, p.34) 。学会のこれまでの3 年半は、Fowler のこの言葉どおりだった。いくつかの委員会ができ、学会員は増え、学会誌も厚くなってきた。ネット上で「日本看護倫理学会」と打つと、年次大会がズラリと並ぶようにもなった。昨年の大会は岩手。3.11の困難を乗り越え、約3か月遅れて大会を成功させた東北の同胞たちは、全国からやってきた参加者に大きな感動を与えてくれた。学会の基礎はこのようにして固まってきた。発起人のひとりとして正直嬉しく、この学会のない職業人生はもう考えられない。(以下、省略)(小西恵美子:巻頭言「日本の看護倫理のあした」, 日本看護倫理学会誌, Vol.4:1-2, 2012.より抜粋)

学会の沿革

歴史(概要)

2008年6月15日 日本看護倫理学会設立総会において日本看護倫理学会の設立が承認(理事長:高田早苗以下、理事・監事12名、評議員63名で組織)
2008年6月15日 神戸市の兵庫県看護協会ハーモニーホールにて第1回年次大会を開催
テーマ「看護倫理のタペストリー -看護倫理の可能性をひらく-」
*これ以後毎年、年次大会を開催(詳細は、「年次大会」参照のこと)
2008年6月8日 日本看護倫理学会誌第1巻を発行
*これ以後毎年、日本看護倫理学会誌を発行(詳細は、「学会誌」参照のこと)
2019年12月
〜2020年2月
会員への法人化のための定款および諸規程案の提示と意見募集。寄せられた意見への回答の公開ならびに必要な改定の実施
2020年4月1日 任意団体から一般社団法人への移行準備のために一般社団法人日本看護倫理学会を法人登記(ただし、総会で移行が承認されるまでは、任意団体の活動を継続)
2020年6月28日 総会にて一般社団法人への移行が承認
2020年6月29日 一般社団法人日本看護倫理学会に移行。任意団体の解散

2) 歴代役員

第1期
(2008年6月~2012年6月)
理事長:高田早苗
副理事長:石井トク
監 事:中西睦子、野嶋佐由美
理 事:小笹由香、勝原裕美子、小西恵美子、田村恵子、濱口恵子、星 和美、川上由香、坂上晶代
第2期
(2012年6月〜2015年6月)
理事長:高田早苗
副理事長:小西恵美子
監 事:石井トク、佐藤禮子
理 事:麻原きよみ、勝原裕美子、小島操子、長谷川美栄子、前田樹海、横尾京子、谷口千絵、吉田みつ子
第3期
(2015年6月〜2018年6月)
理事長:長谷川美栄子
副理事長:八代利香
監 事:小島操子、佐伯恭子
理 事:安藤広子、北村愛子、久保田聡美、坂田三允、鶴若麻理、山下早苗、永易裕子、浦出美緒
第4期
(2020年6月〜2021年6月)
理事長:八代利香
副理事長:太田勝正
監 事:青山ヒフミ、小西恵美子
理 事:足立智孝、小野美喜、勝原裕美子、北村愛子、鶴若麻理、山下早苗
法人化第1期
(2020年6月〜2021年6月)
理事長:八代利香
副理事長:太田勝正
監 事:青山ヒフミ、小西恵美子
理 事:足立智孝、小野美喜、勝原裕美子、北村愛子、鶴若麻理、山下早苗
法人化第2期
(2020年6月〜2021年6月)
理事長:八代利香
副理事長:太田勝正
監 事:青山ヒフミ、小西恵美子
理 事:麻原きよみ、足立智孝、ウイリアムソン 彰子、鶴若麻理、前田樹海、宮坂道夫、山口さおり

注)任期等については学会誌に掲載された会務報告をもとにまとめている。実運用と若干の齟齬がある可能性がある。

定款・規程